13.ユーラシア大陸東南部縦断〜12日〜すり抜けるハノイ
7時45分のバスで向う。
そんな日に限って初めてギリギリのタイミングで起きてしまった。
バス出発まで後20分無い。
まずい、非常にまずい。
寝る前に荷物も全て整理していて良かった。(と言ってもいつものバッグだけど。)
歯だけ磨いてフロントに行き、
全く余裕が無かったので、カードキーと代金を置いてお釣りも受け取らずにホテルを出た。
直線で3キロ。
15分以内にバスの出発手続きをして乗らないと。
こんな時に限ってバイタクも皆お客を乗せている。
もう汗まみれになってもしょうがない。
そんなタイミングで走っているボクを見たタクシーの運ちゃんが「大丈夫かい?」と話しかけてきた。
「バスまで後10分も無いけど、タクシーを使える距離じゃないんだ。ありがとう。」
そういってまた走ろうと思ったら、
「俺が乗せて行ってあげるよ。」
渋滞の中を常にクラクションを鳴らして、ライトで前にある車たちを煽りまくり、アクション映画ばりの運転で連れて行ってくれた。
正直今までで一番荒くてヒヤヒヤしたけど、本当に助かった。
しかも、南寧は初乗り料金が11元なのに、たったの10元でバスセンターまで連れて行ってくれた。
神様、仏様ってこの世にいるんだと思う。
今日だったら間違いなくタクシーの運ちゃんがボクの中での神様だ。
ありがとう!を何度もくり返し、「そんなヒマがあるなら早くいけ!」と笑われながら怒られるくらい握手をして彼と別れた。
本当に彼に会えなかったら、確実に間に合っておらず、また今日もシャワーも水しか出ない、何か「出そうな」部屋で過ごすところだった。
知らなかったけど、バスではペットボトルの水と、リンゴとパンを配ってくれた。
9時間のバスの旅。
急いで出て来て飲み物も買っていなかったから本当に助かった。
高速道路でのバスの運転は想像していたより丁寧で、だけど反対車線を見ると、乗用車と大型トレーラーが事故を起こしていて、数十キロ渋滞が続いていた。
また反対側を見ると、またのどかな景色が広がっている。
色んな新しい事を知るたびに世界が窮屈でつまらない物になっていってる気がする。と言っても自分の考え方の問題なんだろうけど。
電気も通ってなさそうな中国の田舎の方で毎日畠で働いて、牛とかの世話して、ごちゃごちゃ色んな情報が入らない生活をしてるのが、凄く羨ましくなる。
色んな事を考えながら、タイの映画を見ていたら、いつの間にか国境付近に来たようだ。
同じ陸路で国境を越えるとしてもヨーロッパでは検問も何も無かったが、中国側での国境付近の検問ではバスの中に銃を持った迷彩服の警察官が入ってきてビックリした。
イエス!
ウェルカムバックマイグーグル!
今まで、「百度」(ばいどぅ)を使って散々苦労したのでこれからの旅行は楽になる。
本当にボクのどうしようもなく無計画な性格により、中国とベトナムの国境で意外と移動が多いという事を知らなかった。
そこで助けてくれたのが、隣に座っていた上海から来た中国人の邱さん。
一番最初は中国語で話しかけてきて、そこから「友達に日本語話す奴いるから、今日は一緒に行こう。」と誘って来た。
考えようによっては胡散臭いかもしれないけど、ボクのセンサーに全く反応せず、最終的には、「この人に騙されるくらいだったら喜んで騙されよう。」
と思うくらい色々助けてくれた。
バスから降りて、ゴーカートみたいなのに乗って、移動して、またゴーカート、そしてハノイ行きのバス。
それぞれが微妙に離れているのでややこしい。
けど邱さんが待っていてくれた。
他の観光客は、検問を通る時に検問官に何かを渡している。検問官も検問官で笑顔一つ見せない、おっさんだ。
何を渡しているのかすぐに分かった。
小さい額だけど、賄賂だった。
素直に「マジかよ、ベトナム」と思った。
だがしかし、ここベトナムはボクが一番得意とするホームグラウンドの様な国だ。
先制攻撃をしてみた。
「しんちゃお、ちんぽこちゃん!」
日本語にするとどストレートな下ネタに聞こえるけど、ちんぽこはベトナム語で「ハト」ですから。
だからボクは、ただ、
「こんにちは、ハトちゃん!」
とおっさんに向かって元気よく言っただけ。
おっさんがリアクションを撮る前に笑顔でウインクをしたらもう、こっちのペースになった。
おっさんが勝手に知ってる日本語を話し出し、後はそれに合わせれば良く、賄賂なしでスタンプも簡単に押してくれた。
いや、それだけで無く、握手を求められ。
おっさんのカメラで写真も一緒に撮った。
もし、おっさんがInstagramをやっているのなら、きっと今日アップロードされたであろう。
さすがはマイ ホームグラウンド ベトナム。
ただ、ボクが通過してきた時の邱さんのちょっぴり遠くを見る様な視線が気まずかった。
ゴーカートに乗ったり、バスに乗ったりして、ハノイへと出発。
家の作りも、全て変わった。
というか、土の色も一気に赤っぽくなり、フェニックス的な木、後は牛と鴨が中心の世界。
同じ道路できてるのにまるで飛行機で来たような新鮮な感覚になった。
久しぶりに聞くベトナム語。
なんかすごく落ち着く。。笑
バスに乗っていた中国人達も良い人達ばかりで、中国人以外の人間はボクだけだったので、基本的にみんなの注目の的になり、色んな人が英語で話し掛けて来てくれた。
高校の先生をやっていたり、ビジネスマンだったり、自営業をやっていたり、色んな人に出会った。
でもさすがは我がベトナム。
運転、荒いぜ。
無理な追い越し、当然だぜ。
いつの間にか寝ていて、途中バスがとまった。
お昼ご飯休憩らしい。
全くそういう頭が無かったので、考えもしなかったけど、ボクはベトナムのドンもアメリカのドルもどっちも持っていなかった。
とりあえずお昼ごはんは抜いて、ハノイに着いて、銀行に行って換金してから色々考えよう。と考えていた。
しかし、そこはさすが中国人。
「昼ごはん、一緒に食べようよ!」と何も言わずに奢ってくれた。
本当に、ベトナムに来てまで、人に助けられてばかりだ。
またバスに乗り、ハノイへと向かう。
「え?ここで降りるの?」という何も無いところで降ろされ、邱さんに誘われるままタクシーに乗せられ、全く分からない場所へと連れて行かれた。
着いたのは、鉄の門が付いた5階立ての家だった。
「鉄鋼会社をしている。」と言ってたからもっとファクトリーな雰囲気の場所に行くと思っていただけに拍子抜けだったけど、ボルトやワイヤー、色んな機械などもあり、邱さんが言っていた事は本当だった。
そして、何より、「日本語を話せる友達」の晋さんがミスター(鈴井貴之)に似ていたので、完全に安心した。
邱さんの彼女は、ベトナムの人で、学者一家。
タクシーの運転手に住所じゃなくて、「○○さんの家まで」で通じる所だった。
色々話して、
シャワーを浴びて、
もうそろそろ行こうかな。と思ってた時に、
新事実が明らかに。
「日曜日は、換金できない。」
どうやら僕は本気の丸腰状態でフラフラとベトナムに入ってきてしまった様だ。
そしてボクはそんな事実も知らずにネコと遊んでいた。
ただ、そこで皆が、「今日はこれから一緒にご飯を食べに出かけて、泊まっていけばいいよ!」と言ってくれたので甘える事にした。
と言うより今日バスの席が隣じゃなかったらボクはヤバかった。ありがとう、神様、仏様、タクシーの運ちゃん様、邱様。
家の近くのお寺。
皆熱心に手を合わせていたのが印象的だった。
これは、将棋。
そして、5人で晩ごはん。
ベトナム、
ハノイ、
ホアンキム湖の畔、
ど真ん中で、
まさかのタイ料理
い、いや、美味しかったです。。。
そうだよね、日本人だって、毎日寿司食べるわけじゃないし。。
食事が終わって、バックパッカー達が集まる付近のパブに向かう。
それにしても、すごい人、人、人。
活気しかない。
店員とすぐに仲良くなった。
良くハイタッチをされる。
いつの間にか踊っている自分。
沢山写真を撮られる。
やはり、ボクの基本スペックは対外国人用に作られているようだ。
そんな夜の事は書いてもしょうがないし、まず大事なタイミングに限って写真は撮ってない物。
楽しく過ごして家へと帰った。
やっぱり、
ベトナムの風景には、
スーパーカブがよく似合う。