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硬座だけには気を付けろ。地獄の番外編。

中国の電車は基本全席指定なんだけど、
一番の低いランクの電車には、
「立席」
といって席を持たずに立って電車に乗るシステムがある。

そもそも近場ならまだ立席はあってもいいけど、深夜に乗って昼に目的地に到着しますよっていう便にまでそんなシステムはいらない。というよりそんなシステムが成り立たない事が分からないのか。


0044分発
武昌→桂林
13時間
硬座プレイ


開きつつある中
気合を入れ、
「来るなら早く来てくれ」
と心の中で願いつつも、
着実に遅れる電車
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0110分くらいにやっと到着した。

薄暗いホームを抜けて電車に乗り込み、自分のチケットに書かれていた「7号車の88番席」を見つけると、すでに前の駅から乗っていた先客がいて、自分の席と僕の席の半分を使って横になって寝ていた。

わざわざ起こすのも可哀想だという謎の思いやりが発動してしまい、
僕は
お尻半分だけが乗るイスに
座り、荷物を抱え込んだままの状態で地獄へと突入したいった。。

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硬座。
話に聞くより
仕様が酷いじゃないか。。

硬座。
4人のボックス席の様になっていて、
多分、木でできた硬い椅子の上に布を乗っけただけだと思われる。

硬座。
オマケに、
寢るときに大事な橫の手すりや席のリクライニング機能なども
ある訳がない。

これは、
おかしい。


さっきまで待合所に
1人だけいた
フランス人
おじさん
見当たらなくなってる。

きっと彼は横になれる硬臥とか軟臥を選んで、快適な移動をして、
中国電車旅の真髄は味わえずに終わるんだろう。

当然だ。

僕だって天津の切符売りのおばちゃんが、雑な仕事をしていなければ今頃横になって、ちゃんと寝て快適な電車の旅を楽しんでいたはずだ。


むしろ、最初から「あ、君この行程は硬座13時間だから。」って言われていたら
きっとボクも「あっ、すみません。その日は体調が悪くなる予定なんで、ホテルに泊まって、新幹線で桂林まで行きます。」って答えて、

絶対に、
絶対に
硬座は選択しなかった。

余りにも辛すぎて、結局乗った瞬間の写真一枚しか撮れていない。

まだ水曜どうでしょう。とかなら、キツい思いをしても、苦しみを分かち合う同伴者もいるし、編集をしてくれる人もいるし、それを見てくれる人達だっている。

ボクは一体何が楽しくてわざわざお金を払ってまでこの苦しさを共有する事もできないのにこんな事をしているんだ。

深夜になっても大きな声で話し続ける、おばちゃん。

足元に痰を吐き続ける、人民。

いつの間にか全体がびしょ濡れになっていた、床。

まるで意思を持っているかの如く様々な所に散らばり続ける、ゴミ。


何故だ?
何故なんだ?


大体タクシーに乗ったりしたら、現地の人からたくさん話しかけられる。その時は一対一だから言葉が通じなくても楽しく過ごせるけど、一両80人位乗っている電車で外国人はボク1人きり。
というより、
外国人寝台を選んでいる。

話しかけられたら大変な事になりそうだ。と視線を感じたりする度に狸寝入りをしたりしていたけど、
全くの一睡もできずに朝になって、向かい合って座って、常に膝と膝が触れ合っている
おじさんが起きて、
目が合った。

2秒くらい目が合ったけど、、見事なスルーだった。

その時ボク彼の疲れ切った瞳を見て悟った。

硬座は、
中国の人達にとっても、
苦痛なんだ。

ごめんなさい。
ボクだけがお尻が痛すぎて辛い。とか、
こんなの乗りこなせる中国の人達は凄いなぁ。
とか
思って。

日が昇って昨日から乗っている組はグッタリ。
朝から乗り込んでくる組の容赦ないボリュームの大きさでの会話。
明らかにテンションが違う。

今のボクはきっと
「ヒヨコがオスかメスか一瞬で判断する職人」と同じ様に、
「硬座で昨日から乗ってるか朝から乗ってるか一瞬で判断する職人」になれると思う。

ウンザリしながら電車の旅は続く。

13時間の予定なのに、
もう2日間くらい電車に乗っている様な腰とお尻の痛みだ。

生まれて初めて自分のお尻の悲鳴を聴いた。



景色を見る余裕なんて、ない。
音楽を聴く余裕なんて、ない。
歴史を想う余裕なんて、ない。


ただ、目の前にいるおじさん
心の中で「お疲れ様。」と少し自分の中で芽生え始めた友情に似たものを感じるだけだ。

結局この電車の中で
中国人との会話はゼロだった。
完全に今回の武昌駅から桂林駅
ボクにとってのロンリープラネットだった。

桂林駅を降りて少し歩いていたら、いなくなっていたはずの
フランス人のおじさん再会し、
ウインクされたのは言うまでもない。